Webサイトの見直しを検討していたO社が直面していたこと
O社は、業務システムや関連ハードウェアを複数展開する売上1000億円規模の老舗IT企業です。
全国に100名以上の営業担当を擁し、展示会やアウトバウンド中心の営業スタイルが定着していました。
マーケティング専任部門は不在で、Webの運営も経営企画部が主導。各製品の事業部が自ら更新・改善できる柔軟性はありませんでした。
アジタスへの当初のご相談は「Webサイトのリニューアル」でした。
しかしヒアリングを通じて私たちがご提案したのは、Webサイトのリニューアルではなく、“営業とマーケティングが分断された構造の改善”に他なりませんでした。
まずはWebサイトに関してだけではなく、該当事業の商品特性、競合情報、組織体制などについて深くお話を聞かせていただき、マーケティング全体の課題を整理しました。具体的に下記しますが、要するに「だれにどんな情報を提供していいかわかっていなかった」「営業にどう協力してもらいたいか決まっていなかった」という状況でした。このような状態ではWebサイトリニューアルは営業成果につながるマーケティング施策にはなりえません。このプロジェクトはBtoBマーケティング全体の再設計が必要だと判断し、まず方針変更の調整に取り掛かりました。
O社に対して、私たちは2つの重要な前提を見立てました:
ある程度広い市場向け商品であり、潜在顧客もWeb検索で情報収集を行う
→ コンテンツマーケティングによる「接点づくり」や「リード総数の拡大」が効果的
比較検討力・商談構築力に長けた営業担当が多い
→ 「今すぐ客」じゃなくとも営業がフォローできるため、供給する仕組みと文化ができれば成果に直結する
この2点を前提に、「顧客の購買プロセスの整理」→「課題・ニーズに準じたWeb設計」→「潜在顧客との接点を増やすコンテンツマーケ体制」→「営業成果につながるデータ連携」を一貫して構築すれば、営業成果を伸ばせると判断しました。
まず行ったのは、「Webリニューアルだけでは成果が出ない理由」の仮説を共有することでした。
そのため、経営層への説明機会を意図的に増やし、直接対話で「構想の妥当性と投資効果」を理解していただくことに注力しました。
承認をいただいて以降は、以下の4つの施策を進めていきました。
O社には、長年の経験から「このお客様は近いうちに動く」「今は情報収集フェーズだな」といった、営業ならではの感覚を持つ人材が多く在籍していました。
その強みを活かすべく、短期集中で以下を実施しました:
トップセールスとのロールプレイング
見込み顧客インタビュー
他社サイトや営業資料の比較調査
その上で、商品ごとに開拓優先度の高いお客様の購入までの考え方・行動パターンを策定(≒購買プロセスの整理)。
情報収集行動の中で予測される検索キーワードや、システムの比較検討・乗り換えの“決定打”となる情報を特定しました。
さらに、対象キーワードの選定はバイネームで想定した見込み企業をベースに優先順位を設定。
単純なトラフィックを追うのではなく「お客様が商品検討のプロセスを進めること」を重視した設計としました。
従来のWeb構成は、製品名や組織図ベースの分類となっており、
お客様が「この業務で困っている」「こういう状況を改善したい」と感じたとき、
その“入り口”から適する製品を探すことが難しい状態でした。
「機能から製品を探す」だけではなく「自分の困りごとから調べ始める」お客様の行動にも対応できるよう情報を設計し直しました。
「課題 → 解決策 → 製品」までを3クリック以内で案内する導線を全ページに設置
製品一覧では比較検討しやすい項目設計を追加
業種別ユースケース、導入事例、資料DLなど商談直結型のコンテンツを拡充
既存の「組織図ベース」の構造を維持しつつ、顧客の思考導線に沿ったサイト導線を実現することで、実態に即した課題解決型の設計を実現しました。
④潜在顧客との接点を増やすコンテンツマーケティング体制の構築
O社の商品は、幅広い業種・業態に向けたものであり、顧客の情報収集が「課題顕在化の前段階」から始まることも多くあります。
そのため、顕在層だけでなく「まだ困りごとを言語化できていない層」との接点をいかに持つかが重要なテーマでした。
そこで私たちは、製品情報を扱うサービスサイトとは別に、日常的な業務課題やトレンドを扱う情報発信サイトを立ち上げました。
お悩み解決型のSEO記事の継続的な制作
お役立ち資料、業種別のチェックリストの公開
現場ニーズに即したセミナー・ウェビナーの開催
といった“引き出し型のコンテンツマーケティング”を実施。
これにより、月間100万PV規模の集客メディアに成長。
さらに、ターゲットとなる役職から月間300件のリードを獲得できるようになりました。
この取り組みは、短期で商談化しない潜在層との長期的な関係づくりの基盤として、営業やインサイドセールス活動とも連動しながら成果を上げています。
O社ではすでにMAツール(Salesforce Account Engagement)が導入されていましたが、
営業現場では「スコアを見ても、動くべきかどうか判断できない」といった声が多く、ツールと営業活動が分断されたままの状態でした。
そこで私たちは、営業が「この会社ならすぐに動こう」と判断できるよう、MAで蓄積される行動データを営業が“使える情報”に変換する仕組みを再設計しました。
過去受注実績から「反応の良い属性や課題パターン」を抽出し、MAツール(Salesforce Account Engagement)のスコア設計を再構築
有望リードは即日インサイドセールスへ通知される運用に変更
当初、営業からは「スコアを見ても動けない」という声もありましたが、
営業定例に同席し、実際の商談転換データとスコアの相関を一緒に確認することで、納得感を得ながら運用を定着させました。
一度走り出したあとに成果を持続させるには、
数値を正しく読み取り、現場での意思決定につなげる“データ活用力”の定着が不可欠です。
アジタスでは、O社が自走できるようになることを視野に入れた、継続的な内製支援を行いました。
KPIに基づくGA4レポートテンプレートを用意
月次定例MTGで「数字の読み方」と「施策改善の判断軸」をレクチャー
営業パイプラインとの突合も行い、マーケティングプロセスを含めたボトルネックの特定と施策修正を支援
数字が読めるようになったことで、マーケ起点での提案と改善が自走できる状態に近づきました。
「プロジェクト初期に“受注までの数式”を描いてくれたおかげで、経営会議の質問が『やるべきか?』から『さらに加速できるか?』に変わった」
「“資料請求=カタログ配布”だった私たちが、顧客の課題感から逆算して商談のストーリーを組み立てられる組織に変わりました」
──商品や事業特性に合わせ、組織風土を活かし、成果につながる構想と進め方を共に設計する
私たちは、お客様の状況に合わせてプロジェクトを柔軟に設計します。
依頼されたことをそのまま実行するのではなく、
その構造で成果が出るか
社内で合意形成できるか
運用が定着するか
までを見通した上で、施策だけでなく「進め方そのもの」も含めてご提案しています。
「こうしたい」だけでなく、「今の組織で、どう進めれば実現できるか」を一緒に考える。それがアジタスの仕事です。
訪問に頼らず、月 200 件の商談を創出するインバウンドマーケティングの仕組みを
2 年で実現。
― 今こそ“脱ルート営業”をお考えの皆さまへ。
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