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「“これ補充しておきますね”だけの営業から抜け出したい」──業務用消耗品メーカーが挑んだ、“ソリューション提案営業”への転換

プロジェクトの背景

ある業務用消耗品メーカーから、私たちに寄せられたご相談。

「お客様から在庫を確認されて補充するだけの営業から、もっと提案できる形に変えていきたい」
「“これ足りてますか?”ではなく、使う現場の困りごとを先回りして提案する営業組織にならねば...」

この企業は、医療施設、飲食店などに向けて数百種以上の備品や資材を提供しており、長年、ルート営業を主軸に事業を展開してきました。定期訪問を通じて発注を受けるスタイルは、お客様にとっても安心感がある一方で、

  • お客様からの相談を頂く機会が少なく、特に潜在的な困りごとを拾いきれない。

  • 気づいたら大型の案件は他社に発注されていて、自社には小ロットの備品発注ばかり。
    といった機会損失が目立つようになっていました。

ご相談の目的は、営業スタイルを“納品中心”から“提案型”へと転換し、それぞれのお客様との関係を深め、発注単価やLTVを高める商品パッケージと営業体制を作ること
さらに、「備品を届けるだけの会社」という見られ方から脱し、「業務の課題に寄り添ってくれる会社」としての立ち位置を作り上げたいという意志が込められていました。


取り組み当初の課題


まずは市場環境、商品特性、競合状況、現行の営業スタイルについて丁寧にヒアリング・調査を行い、マーケティング全体の課題を整理しました。特に顕著だったのは、長年にわたるルート営業と「商品を売る」ことに偏った営業習慣により、顕在ニーズにしか対応できず、顧客課題の深掘りや新たな需要への対応ができていない点でした。

課題 詳細 影響
① 需要待ち営業 既存顧客への在庫確認・新商品紹介が中心。潜在課題の掘り起こしゼロ 他社に先手を取られ、アップセル機会を逸失
② カタログ型Web 製品スペック閲覧には最適だが「なんとなく困っている層」を呼び込めない 新規リードCVR <1%/月
③ 市場縮小 顧客数伸びず、1顧客あたり売上の最大化 が必須 ルート営業では LTV 向上の打ち手がない
④ データ不連携 MAツールが未導入で、検討している顧客の検知不可・営業フォローは人手依存 追客漏れで機会損失・分析不可で改善できない


アジタスの見立て

当クライアントの営業体制に対して、私たちは3つの重要な方針を見立てました:

  1.  顕在ニーズにのみ対応しており“施設課題の顕在化前” にリーチする情報発信基盤がない
    →発信サイトの作成・発信体制の確立を通して、他社よりも先に顧客に認知される仕組みを実現
  2. ブランドポジションとして“物売りメーカー”のイメージが固定化してしまい、ソリューション提案の想起を阻害している
    →ソリューション商品に合わせてタグライン/ビジュアル/UI の一気通貫リブランディングを行い、潜在顧客向けコンテンツの拡充でLTVの向上に寄与
  3. 商品点数が多いためWeb上の商品関連コンテンツ管理が煩雑でありCMS統合・IT ガバナンス がグループ全体課題
    →最適な情報発信を実現するため点在している情報を一元化できるAdobe Experience Manager への移行・統合が鍵になる

「課題発生タイミングで他社よりも早く接触する」「物売りではなくソリューションを提供する」「商品情報の管理精度向上でミスを防いで効率化」この3点を実現することが、縮小市場で展開する消費財メーカーの売上向上の勝ち筋だと判断しました。


解決までのストーリー

 

業界別に“困りごと”を深掘ることからスタート

店舗系、医療系など、対象業界ごとに現場の担当者やお客様へのヒアリングを実施。
「どのような場面で発注の相談が入るのか」「商品ではなく業務改善について相談されるときは、どんな内容でどんな流れか」など、意思決定の背景を丁寧に言語化しました。

特に、商品単体ではなく施設全体の悩みごとにどう向き合うか、その検討プロセスを各業界別に整理。これにより、物売りではなく「業務の困りごとに対する提案サービス」として、どのように選ばれるかを具体化することができました。


「誰に、何を売るか」を見直すSTP再設計


もともと、複数商品を組み合わせたソリューションパッケージは存在していましたが、「どのような施設が、どんな背景でこのパッケージを必要としているのか」は曖昧なままでした。

①で整理した検討プロセスをもとに、「パッケージ購入の意思がある顧客像」や「施設タイプごとのニーズ傾向」が明確に。結果、ソリューション販売が有望な既存顧客をバイネームで抽出することができ、営業活動の優先度や提案方針を見直すきっかけになりました。


業界ごとの困りごとに応える情報発信サイトを立ち上げ

営業活動の優先度や提案方針を整理したうえで、
ターゲット別の購買背景と課題をもとに、施設運営の現場に寄り添った情報発信を行うWebメディアを構築。たとえば、

  • 「医療施設運営におけるBCP対策Q&A」

  • 「厨房のリスク管理体制チェックリスト」

といった具体的な業務課題に焦点を当て、“課題からたどれる”コンテンツ設計を重視しました。
現場目線のTipsに加え、学術情報なども咀嚼して発信する編集体制を確立。単なる製品紹介ではなく、「困ったときに頼れる情報源」として認知される状態を目指し、継続的な発信を行いました。


システム周りを刷新し、“情報の分断”を解消

③により、サイトに訪問する見込み顧客の総数が増えたことに合わせて、Webサイトを取り巻く課題を解決するために以下を行いました。

▶ Webサイト運用における管理システムを統合(Adobe Experience Managerの導入と運用定着のフォロー)
事業部ごとに分かれていたWebサイト運用を、AEMへと統合。
更新スピードとブランド表現の一貫性を両立し、コンテンツの全社的な管理体制を整備しました。

▶ 関心度の高い顧客を営業につなぐ仕組みを整備(MAツール Marketoの導入)
資料ダウンロードやメールの反応などをもとに、「今、営業が動くべき顧客」を検知する仕組みを整えました。
スコアリングに基づいた通知・引き渡しフローもあわせて構築。これにより、問い合わせを“待つ”営業体制から適切なタイミングで提案できる営業体制へと移行することができました。


発信・接点・見せ方を統合し、LTV向上につながる仕組みへ

③のメディア発信と連動して、ソリューション商品の訴求軸を再設計。
ソリューション商品のタグライン・ビジュアル・UI全体の一貫性を整備したうえでサービスページのリニューアルを行い、顧客にとっての「相談しやすさ」や「分かりやすさ」を向上させました。

以降は展示会や広告施策、既存顧客へのキャンペーン展開などの複数の顧客検証機会を経て、ソリューションに関心を持つ顧客セグメントと訴求軸の精度を向上させていきました。

これまでは施設全体の課題は他社に相談されていたところから、自社に相談が集まる状況をつくることができ、再購入や長期契約へとつながる関係性が増えていきました。

 


お客様の声

「お客様から “こんなことも相談できるなんて知らなかった、最近は何でも相談できて助かっている。"と声を頂けるようになった」(営業1課 課長補佐)

「これまでは“製品情報サイト”としてしか見られていなかったWebが、“業務のヒントがある場所”としてシェアされるようになりました」(マーケティング企画部 主任)


アジタスが提供する価値

「市場にフィットするブランド認知」の変化を、一気通貫で支援

どのようなお客様に、どんなサービスが響くのか──
市場リサーチを通じてターゲット仮説を立て、ブランドや商品ポジションを再設計。
さらに、デジタルのしくみづくりや情報発信のコンテンツ設計まで、戦略から実行まで一貫してご支援します。

単なる“製品提供企業”としてではなく、課題解決のパートナー=ソリューション企業として選ばれるブランドへと認知を変えていった事例をご紹介しました。

「こうしたい」だけでなく、「今の組織で、どう進めれば実現できるか」を一緒に考える。それがアジタスの仕事です。


商品を売る会社から、“課題を解決するパートナー化”を支援します。

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